不埒な上司と一夜で恋は生まれません

「……そこはいいんですか?」

「いいけど。
 いろいろ後ろ暗いことがあるのなら、早めに精算してちょうだい、和香さん」

 そんな母の背後には緑に囲まれたアクアウォールがあって、家の中なのに、滝のように水が流れている。

 密林の女王のような母親が和香に向かい、よく通る声で忠告する。

「あなたがもし、なにかを成し遂げたいのなら、結婚前にさっさとやっておしまいなさい。

 その代わり、禍根は残さないで。
 耀に降りかかるから。

 もしも、あなたが誰かになにかをしようとしているのなら。

 後腐れないよう、敵が二度と立ち上がれないくらい、完膚なきまでに叩きのめすのよ。

 私からの話はそれだけ。

 今から出かけるから、支度があるので、失礼するわ。

 ゆっくりしていって。

 耀、庭でも案内して差し上げなさい」
と言って、母は出て行ってしまった。