不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 和香は笑って話していて、母はなにも笑っていない。

「うちの祖母が天気予報を見ながら言ったんですよ。
 『今、雨戸を持ってお出かけくださいってテレビで言ってた』って」

「それで?」

「どうも雨具だったらしいです」

 無表情に母は頷く。

「そういえば、以前、姉が『素焼きのナッツ』って買ってきてくれたんですけど」

 姉っ!

「『素焼きのナッツ』って、素焼きの壺でナッツを焼いたのかと思ってたって、姉に言ったら、

 『……なんで、そっちを素焼きにした』って言われたんですが」

 母はまた頷いたあとで、

「それから?」
と続きをうながす。

 なにも笑っていないのに、何故続きを要求する。