不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 姉も蚊も実は実在していないとか?

 石崎の心の中だけに住んでいるとかっ?

 信じたものだけに見えるとかっ!?

 あるいは、莫迦には見えない姉だとかっ!?

 そこまで思い詰めたとき、
「課長」
とこちらに気づいた和香が専務に愛想よく頭を下げたあとでやってきた。

「石崎」
「はい」

「……もしや、お前のおねえさんは見える人にしか見えないとか?」

「なに言ってるんですか、課長。
 大丈夫ですか? 課長」

 ……この俺が、変人だと思っている石崎に、大丈夫ですかと、頭の具合を心配されてしまうとは。