不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 いや、そのどれも嫌だ、と耀は思う。

 なんだかわからないことに巻き込まれつつあるとしても。

 時を戻して、やり直せるとしても。

 前のように、石崎と、ただ廊下ですれ違うだけの関係になるのは嫌だ、と耀は和香の手を握る手に力を込める。

 こんなことするのは、俺らしくないと思いながら――。

 そんな自分の手を見つめ、和香が言う。

「それにしても、こんなにペラペラ秘密を話してしまうなんて。
 私、実は課長にメロメロなのでしょうかね?」

 どきりとした。

 息が止まった。

 いや、そんな言葉では言い表せない、と思って返事をしないでいる間に、和香は勝手に自己完結してしまう。

「そんなことないか。
 気のせいですかね?

 まあ、私、今まで誰も好きになったことないですもんね」

 そうあっさり、まとめられてしまった。