不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 

「このチーズ、クセがないな。
 あまり味もない」

「そうなんですよ。
 ちょっと不思議なチーズで。

 普段は臭いくらいの方が好きなんですけどね。
 たまには、こういうのもいいかなって思って」
とワインを呑みながら、チーズについて語り合う。

 今日も耀の家はホテルのように綺麗だった。

 チーズを食べ、少し呑んで。

 前回、お互いが借りた本の感想を述べ合う。

「あ、じゃあ、その本、今度借りてみます」
と和香が言うと、

「そこにあるぞ」
と耀がソファの方を指差す。

「なんかいいですね。
 今話題に出た本がすぐそこにある。

 なんとなく家族のようですね」

「すぐに本が共有できたら家族か」
と言ったあとで、耀は一瞬、黙り、

「……そういえば、さっき、うちの親が遊びに来いと言っていたが」
と言う。

「行った方がよければ行きますが」