不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 



 おや?
 向こうから、綺麗なマダムがやってくる、と和香は思った。

 シンプルだが、上品な装いに高いヒール。

 名画のようなその横顔を見て、

 ……うーん。
 何処かで見た顔だ、と思ったその瞬間、マダムがこちらに気づいた。

 あら、という顔をする。

 すると、まだなにも問われていないのに、突然、

「石崎和香です」
と耀が自分を紹介しはじめた。

「あら、そう」

 ……考えてみれば、なんかすごい会話だな、と和香は思う。

 スーパーで会うなり、なんの挨拶もなく、いきなり、

「石崎和香です」
「あら、そう」って……。

 そんなこと思いながら、和香は、ぺこりと頭を下げた。