不埒な上司と一夜で恋は生まれません

 


 二晩ともに過ごしたんだから、これはもう結婚すべきだろう。

 そんなことを思いながら、月曜日、耀は社食に来ていた。

 いや、夜をともに過ごしたと言っても。
 和香は猫みたいに丸くなって寝ていただけなんだが。

 そして、自分はそんな和香の寝顔をただ見てただけ――。

 すかーっとあどけなく寝ている和香を思い出しながら。

 ちょっと得体の知れない女だが、ああしていると、ただ可愛いだけだな、と思ったとき、後ろから和香の声が聞こえてきた。

「それで、取っ手が取れたんですよ。
 取っ手が取れないティファールだったのに」

 ……なんかしょうもない話してるな、後ろで。

 騒がしい社食でも。
 前で時也が大きな声でコンパの話をしていても。

 少し離れた席にいる和香の声はよく聞こえた。

 みんなにもよく聞こえるのか。

 自分にだけ彼女の声がよく聞き取れるのかはわからないが。