ぷるんの加護はなくなったが、魔術陣にカオスの身体の半分を落とすことは成功している。すぐにカオスが自由になるわけではない。


カオスを捕えた魔術陣を前に、エリアーナがサイラスと共に防護封印の球体に閉じ込もっている。封印詠唱中のサイラスをカオスから守るためだ。



だがここで再び、同じ問題が浮上する。



「先生、もう105番も終わるんやでぇ!


次どうすんねん!」



サイラスでも口を動かすしかない高度な詠唱を続ける横で、エリアーナが防護球体の中で手足バタバタダンダンして慌てている。


封印詠唱は108番まで継続して完了しなくては、何の意味もない。


またカオスが自由に飛び回り暴れ回り始めるだけだ。



「ああもう、また火の玉出るで!加護はもうないんやでぇ!みんな死ぬでぇ?!ってギャァア!こっち向くなアホ!」



上へ上へ逃げようと暴れ狂っているカオスが、いきなりギロリとエリアーナを睨んだ。防護封印はカオスの火の玉を弾けるほど強い壁ではない。とんできた火の粉や衝撃波をかわす程度だ。


再び発射された火の玉がエリアーナたちを襲う。


「ちょお!先生これヤバ!」


エリアーナが真顔で封印詠唱を継続するサイラスの背中に抱きつく。

すると火の玉が目の前でかき消えた。



黒のマントがなびいている。



「魔王様ぁああ!?」