ベアトリスはぷるんの外へ出て行こうとする魔国民の前に、両手を広げて立ちふさがった。


ベアトリスを取り囲む大勢の魔国民たちは斧や剣を向けて、怒りで顔を痙攣させた。


「どけ、人間」

「どきませんわ」

「魔王様の命令はもう消えた。殺すぞ」

「加護の中で私に危害を加えることはできません」

「お前の相手をしているのがムダだってことだな」

「多少はお話が通じる方がいて嬉しいですわ」


ベアトリスが皮肉を言うと、一人の国民から斧が飛んでくる。だがベアトリスの前で弾かれた。


ぷるんの体内では誰もベアトリスを傷つけることはできない。


「魔王様の敵を討て!!」

「魔王様に弔いを!」

「魔王様に安らぎを与えるんだ!」

「いくぞぉおお!!」


ベアトリスを殺せないと悟った魔国民たちは、ベアトリスを素通りした。いきり立った魔国民の団体がぷるんの外に出て行こうとする。


一人がある意見を述べると、全員にすぐに伝播してしまう。それが最善かと考える頭がなく、同調力が非常に高いのが知能の低い者たちの特徴だ。


魔族が調子に乗ったなら、言葉などもう通じない。

だから、魔王だけが使える命令権がある。