ドクロ弟がエリアーナの目隠しを取ると、鍾乳洞の中の一角に封印石が置かれていた。フェルゼンが、太くて鱗で覆われた足を持ち上げて跪いていたエリアーナの頭を踏みつけた。


「うぐぅ」


エリアーナは頭を踏まれて、地面を舐めさせられる。涙がぼろぼろ零れ落ちたが、拭いてくれるものはいない。さらに強く後頭部を踏まれて、口に砂が入りジャリついた。


「俺は封印術も知識としては学んでいてねぇ。もし、違う詠唱し始めたらすぐに腹掻っ捌くからそのつもりでねぇ」


腹からジワリと浮いた血が、エリアーナのメイド服を染める。エリアーナは強烈な痛みと惨めさにジャリジャリする口で、唇を噛んだ。


(死にたくない。先生、うち言われた通りにしてええんやんな)


エリアーナはサイラスに、万が一、脅された時は相手に従えと言われていた。


サイラスはエリアーナの命第一だ。


『でもうちが封印解いたら怖い奴が出てくるんやで?ええの?』

『大丈夫だよエリアーナ。僕が倒してあげるから。お願いだから生きて帰ってきて』

『わかった!!』


サイラスの優しい笑顔が思い浮かぶ。両手がなくても、口があれば封印を解くための逆詠唱はできる。


エリアーナはピンク眼から涙を零して、腹の痛みに耐えながら逆詠唱を始めた。


(先生、助けて)