「今日は暇だろうから、床掃除したら自由にしていいわよ」

母がそう言ってくれたので、私は両親の営む理容院の床掃除を済ませると、UVケアをして海へと向かった。

泳ぎに来たわけではない。

２１にもなって、子供みたいかもしれないが、私は磯遊びが趣味である。

ただわけもなく、箱メガネで海中を覗いていると、それだけで癒やされるから。

どんな薬だって、自然の美しさには敵わない。

しばらくそうして遊んでいたら、珍しく釣り人がやって来た。

ここ、あんまり釣れないけれど…。

密かにそう思いながらも、私たちは特に言葉を交わすこともなく、各々好きなように過ごしていた。

「全然釣れないなぁ…」

そんな声がして、ふと、釣り人の方を見た。

声を聞いた時にも、あれ？と思ったが、初めてちゃんと顔を見て、少し驚く。