君と笑い合えるとき

「きこと一緒に過ごしてきて,ある時突然,そのときの事を思い出したんだ」



子供だったとき,恋をしていたとき。

なんだろう,2つの時間は,私にとってもかけ替えの無いものだった。



「僕ね,きこが憶えてないことなんて知ってたよ。だけど,思い出しちゃったから。……いつか,きこが僕を置いていきそうになったら」

「捕まえてくれるつもりだった?」

「そこ,くれる,なんだ」



溢すような笑みが,なんだかとても嬉しそうで。

私もうんと大きく頷く。



「だって私,静流くんの事好きだったもん。今も,ずっと。でもいつか,ふわっと諦めたかもしれない」



その時に,迎えに来てくれるなら。



「私,諦めなくて良い……!」



がばっと,私は静流くんに抱きついた。

にひひっと笑っていたら,静流くんも驚きながら抱き止めてくれて。

笑い合う隙間に,また頬にキスが落ちる。



「もうっ……! 多い!!!」



割れながら贅沢な文句。

一々素直に聞き入れない静流くんは



「嫌?」



と首をかしげる。

あざといと言う言葉は,高校3年生にしてかっこよくも可愛い,静流くんのためにある言葉だ。

その美しさまでもが,計り知れない。

案外子供っぽくて,意地悪なところも。



「恥ずかしいの……!!!!!」

「あはっは」



可愛いってその一言は,私のじゃないのに。

知らんぷりして言ってくるんだ。