翌日、登校して、自分の席に着いていた彩に


「おはよう。」


と遥が声を掛けて来た。


「おはよう。」


「彩、ちょっと。」


と言って、遥が促した視線の先には、町田の姿が。


「話があるって。」


「わかった。」


心配そうな遥に、1つ頷いて見せた彩は、教室を出た。


「おはよう。」


明るい表情で言った彩に


「おはよう。」


気まずそうに視線を逸らしながら、町田は答える。


「今日、練習来るよね?」


そう聞いた彩に


「行ってもいいのか?」


と町田。


「もちろん。というよりマチヒロ抜きで、明日の試合、戦えないんだけど。」


答えた彩は笑顔。


「昨日はごめん。」


彩のその姿を見て、素直に町田は頭を下げる。


「俺、廣瀬が適任だと思ってるから。廣瀬じゃなきゃ、主将は務まらないと思ってるから。ただ、廣瀬があんまり自分にプレッシャ-掛け過ぎてるから、それを少しク-ルダウンさせてやりたいと思って、あえてくだけた態度取ってたら、なんか変な方向に行っちゃって・・・。」


「そうだったんだ。」


「本当にすまん。」


そう言ってもう1回頭を下げた町田に


「ありがとう。」


と彩は答える。


「確かに私、少し頭に血が上り過ぎてたかもしれない。それは反省してる。真剣にやらなきゃいけないんだけど、少しは気持ちに余裕がなければ、いい結果なんか得られるはずないからさ。」


「廣瀬・・・。」


「明日は・・・楽しみながら、でも全力でやろう。」


「ああ。」


そう言って頷き合った2人。そして教室に戻った彩は、心配そうに迎えた遥に、パチンとウインクして見せる。その彩の仕草に、遥もホッとしたように笑顔になった。


そして迎えた県大会。颯天高は、男子団体は残念な結果に終わったが、女子団体2チ-ムと男女個人戦4選手は見事に予選を通過することが出来た。


その勢いで、臨んだひと月後の全国選抜大会県予選。颯天高は男女個人、団体ともに予選突破したものの、選抜大会出場には手が届かなかった。


「残念な結果に終わったけど、私たちには次の目標がある。それに向かって、また練習して行こう。」


「はい!」


彩の言葉に、部員たちは力強く頷いていた。