出場する9名は全員2年生。それなりに試合経験も積んだ面々だった。12射の内、5中なんて的中率5割を切るくらいなのだから、先輩たちなら軽いもんだろうと、尚輝は気楽な気持ちで見ていたのだが、意外なほどに苦戦している。


結局、4チ-ムともクリアできず


「もう一回やろう。」


と言う彩の言葉に


「うん。」


「わかった。」


遥も町田も頷いて、仕切り直し。しかし、今度も全滅で


「とりあえず、休憩しよう。」


町田の提案で、飲み物を手にする選手達。しかし、彩は動かず、的をじっと見据えている。


「彩。」


遥が声を掛けるが、彩は返事もしない。すると、それを見た町田は、彩のボトルを手にすると


「廣瀬。」


突き出すように、彼女の目の前に差し出す。そんな町田を一瞥した彩は、黙ってそれを受け取って、グィッと口に運ぶ。


(彩先輩、怒ってる・・・。)


誰に怒ってるわけではない、自分の不甲斐なさに怒ってる。尚輝はそう感じていた。


そして、練習再開。先程よりも命中数は上がったが、しかし安定しない。誰かがいいと誰かが足を引っ張る。そんな状態で、時間があっと言う間に過ぎて行く。


「1回、交代しよう。」


それをずっと見守っていた児玉が、そう声を掛け、それまで記録を取ったり、練習のサポートをしていた今回の試合に出場しない部員が、練習に入り、彩たちは児玉の周りに集まった。


「久しぶりの試合に向けて、熱くなるなと言っても無理なのはわかってるが、もう少し肩の力を抜け。夏合宿を経て、お前達の力は確実に上がってる。だから、焦るな。」


「はい。」


顧問にそう諭され、選手達は頷く。結局この日は、選手の練習はそのまま再開せずに終了。


「気分転換に今日は、ハンバーガー食ってこうぜ。」


そんなことを言って来た町田に


「今の私に必要なのは、気分転換じゃなくて練習だから。もう少し残ってやってく。」


と答えた彩は、みんなに背を向けた。