「今年の日程は、確かに1年生には気の毒だと思うけど、こればかりは仕方がない。あんたがそこまでやる気持ってくれてるなら、頼もしい限りだよ。」


「はい、とにかく全力で頑張りますから、見てて下さい。必ず予選は突破して見せますから、そしたら主将、是非俺とデ-トして下さい。」


そう顔を輝かせながら言った尚輝に、呆れ顔で眺めた彩は


「結局それ?誉めて損した。無理!」


と言い捨てると、サッサとその場を離れる。


「あ・・・。」


今回も全く相手にされなかった上に


「お前も結局、女目当てじゃねぇか。俺たちと何が違うんだよ。」


「相も変わらず前途多難だな、尚輝くん。」


鮫島と木下に追い打ちを掛けられ、尚輝はしょげるしかなかった。


そしてその週末、男子チ-ムAの一員として、団体戦に出場した尚輝は、緊張の面持ちで、試合に臨んだ。


3名1組、1人8射で計24射を行い、上位16チ-ムが決勝に進めるという状況で、的の前に立った尚輝は


(的ってあんなに遠くて、小さかったか?)


と一瞬、息を呑んだ。


(いけねぇ、緊張してるんだな、やっぱり。)


そう思い至った尚輝は、思わず後ろを振り返る。そこには児玉の横で、なんとも心配そうにこちらを見つめる彩の姿が。


(彩先輩にいいとこ、見せねぇと。)


そう思い直して、所作に入った尚輝。2年生のチ-ムリ-ダ-に続いて、2番手で弓を引いたが、第1射を外すと、頭が真っ白になり、あとは全く訳がわからなくなって、結果は辛うじて1中したのみ。散々なデビュ-戦に終わってしまった。


結局、男女ともベスト16にはほど遠い結果に終わった颯天高は、個人戦も振るわず、予選通過者は出なかった。


学校に戻り、児玉の総括を聞いたあと、解散となり、着換えた尚輝は、更衣室から出てきた彩を待ち受け


「お疲れ様でした。なんか冷たいものでも、飲んで行きませんか?今日の試合の総括もいただきたいです。」


と誘ってみたが


「いくら振られても、全然めげないあんたのそのメンタルの強さを、試合で発揮して欲しかったよ、全く。」


彩はそう、ため息交じりで言うと、尚輝を置き去りにして、遥と一緒に歩き去って行った。