着換えを済ませた彩が、体育館に顔を出すと、既に何人ものOB、OG達がいくつもの談笑の輪を作っていた。


「彩。」


誰か顔見知りをと、彩がキョロキョロと探すまでもなく、すぐに聞き慣れた、でも生声としては久しぶりの自分を呼ぶ声が。


「遥。」


夫である町田や同期たちを引き連れて近付いて来る親友の姿を認めて、彩の顔もすぐにほころぶ。


「やっと彩の顔、見られた。」


「本当だね。」


電話やLINEでの連絡は絶やしてはいなかったが、直接会うのは、かなり久しぶりだ。


「いつ帰って来たの?」


「今朝早く向こうを出て、その足でさっき着いた。」


「そっか・・・。」


答えた彩の顔を見た遥は、表情を改めると


「彩、お帰り。いろいろ大変だったね、本当にお疲れ様でした。」


そう言って、ねぎらいの言葉を掛ける。


「ありがとう。」


「心配したんだぜ。結局、何の力にもなれなかったけど・・・。」


「ううん、そんなことないよ。ありがとう、マチヒロ。」


「廣瀬・・・。」


複雑な表情の町田に


「ホントに大丈夫だから。もうすっかり元気だし。今日、みんなに会えるのがとにかく楽しみだった。」


明るい表情で彩は答える。


「私たちもだよ。」


そう応じた遥に


「さぁ、今年は結構メンツ集まったし、本気で世代対抗戦、勝ちに行くからね。」


彩は檄を飛ばす。


「おっ、本気だな主将。」


「望むところ。」


町田と遥を始めとした仲間たちも、力強く頷く。が


「そうはいきません。」


彩たちの気合に横やりを入れる声が。


「千夏ちゃん。」


「先輩方には申し訳ありませんが。もっとも現役に近い私たちの代が負けるわけにはいきませんから。容赦しませんよ。」


笑顔でそう言った千夏の表情は、前回、ここで会った時と比べ物にならないくらい、すっかり大人びていた。


「そっか、インハイ予選個人3位で今も大学の弓道部で現役バリバリの葉山選手相手じゃ、やっぱり厳しいか・・・。」


思わぬ強敵からの宣戦布告に、諦め顔の遥に


「何言ってるの?相手にとって不足なしでしょ。千夏ちゃん、手加減無用でよろしくね。」


「もちろんです。」


全くひるむ様子もなく答える彩。その顔は本当に輝いていて


(彩、元気そうで本当によかった・・・。)


遥はホッと胸をなでおろしていた。