翌日の休日を挟んで、出勤した彩。


「おはようございます。」


挨拶して、自分のデスクに着こうとすると


「彩さん!」


静が近づいて来ると


「取れたんです。」


と満面の笑みでこう言った。


「えっ?」


問い返した彩に


「一昨日お話したお客様から、昨日電話があって、お願いしますって。」


答えた静の声は弾み切っていた。


「そうなんだ、よかったね。じゃあ・・・。」


「はい、私のプランナ-としての初成約です。」


嬉しそうに頷く静に


「やったね、静。おめでとう!」


そう言った彩の顔も表情も大きくほころぶ。


「ありがとうございます。それで、今度の日曜日、早速初回の打ち合わせなんです。」


「そっか、頑張ってね。」


「はい。」


ペコンと頭を下げると、静は離れて行く。


「よかったね、彩。あなたがあの子を見放さないで、ちゃんと教育してくれたお陰だよ。」


そう声を掛けて来た課長に


「いいえ、私、あの子に謝らなきゃいけないです。」


彩は首を振って答える。


「私、あの子の本当の実力をよくわかってなかったのに、独り立ちに反対して。教育係として、あの子を色眼鏡で見てしまってました。恥ずかしいです。」


「ううん、私だってあんな素直で可愛らしいところがあるなんてわからなかったし。ちょっとビッグマウスなのが玉に瑕だけど、そこら辺は私たちがうまく、手綱さばきをしてあげれば。大きな戦力になって行くよ、これから。」


「そうですね。」


課長の言葉に、彩は大きく頷いた。


そして、迎えた日曜日。さすがに緊張気味に初打ち合わせに臨んだ静。お茶の件は、新婦の母親から、2人は


「そんなことも知らないの。」


とたしなめられたそうで


「若いのに、信頼できるプランナ-さん。」


と結果として、新郎新婦からの評価を高める結果になったようだ。


肝である見積もり提示を間違えることもなく、無難に初回の打ち合わせを終え、うやうやしく新郎新婦を見送る静を見て


(合格だよ、静。)


彩はホッとしたように、頷いていた。