千夏たちが弓道部を引退してから、そろそろ2ヶ月近くが経つ。


思い入れの深かった3年生の姿が、道場から消えて、寂しい思いを抱いてしまったの事実で


「『千夏ロス』だね、尚輝。」


と恋人の京香にからわれてしまったが、彼女たちのあとに続く1,2年生部員の存在が、すぐにそんな気持ちを吹き飛ばしてくれた。


「女子の活躍が嬉しくないわけじゃないが、新チ-ムでは、そろそろ男子にも頑張って欲しいもんだよな。同じ男としては。」


この日、約3週後に迫った、夏恒例のOB・OG会の打ち合わせで顔を出した木下が、そんなことを言い出した。


「同感だが、そのお前のセリフ、出来たら俺達が現役の時に聞きたかったな。」


「へっ?」


「お前、今の方が現役の時より、よっぽど弓道部の活動に熱心だからな。」


そう言って笑う尚輝に


「それを言ってくれるな。過ぎ去りし青春へのノスタルジ-って奴だ。せめてお前の情熱の半分でも部活に注いでいればと、今更ながら悔恨の思いがあるんだよ。」


苦笑いを浮かべた木下は


「その情熱の原動力だった、お前の永遠のマドンナ廣瀬彩先輩は、残念ながら今年は欠席だそうだぞ。」


お返しとばかりに、からかい口調で言う。


「だからな、お前がそんなことばっかり言うから、京香が変に気にして、彩先輩のことになると機嫌が悪くなるんだ。勘弁してくれよ。」


「そりゃ、相変わらず仲のおよろしいことで。」


「ふざけてる場合じゃねぇよ。」


「そうムキになるな。それは菅野がそれだけお前に惚れてる証拠じゃねぇか。」


木下は軽くいなす。


「それより、遥さんもおめでたで欠席、当然町田さんも。」


「淳は?」


「アイツも仕事が忙しくて、帰省を諦めたらしい。宮田さんも長期出張中で、そう言や本郷先輩も欠席通知が来てたな。」


「そうなんだ・・・。」


「同期や近しい先輩たちが軒並み欠席で、今年はちょっと寂しいOB会になりそうだな。俺たち的には。」


残念そうに言う木下に


「もうみんな社会に出て、5年前後経つからなぁ。だんだん仕事での責任は重くなるし、家庭を持つ人も増えて来るしだから、仕方ないな。」


尚輝も同じ思いで頷いた。