「お察しかもしれないけど、私、最近斗真とうまくいってないんだ。今日の式を欠席することも、私には何の連絡もなかった。」


「えっ、そうなんですか?」


「特にここ半年くらいかな、なんかしっくりいかなくなって。」


そう言えば、遥の結婚式の二次会で、久しぶりに2人に会った時、何か違和感を感じたことを彩は思い出した。


「彼、最近凄くお金使いが派手になって。デートの時の食事場所も以前と比べるとワンランク上がった感じで。もちろん最初のうちは私も目を輝かせてたんだけど、段々心配になって来てさ。」


「・・・。」


「私が大丈夫って聞いても、『証券業界は今は景気がいいんだ。バブル期を超える好景気と言われてるんだから、心配するな。』って。確かに株価は日経平均で30000円前後で推移してるし、それはわかるんだけど、バブルが最後どうなったかは、私たちは歴史の事実として知ってるじゃない。」


「はい・・・。」


「だから私もつい、素人ながらいろいろ言ってしまって、それが彼には気に入らないみたい。最近じゃ、露骨に嫌な顔されるし、それにデートもそれこそドタキャンされたり、会ってても心ここにあらずみたいな雰囲気で、なんだかしょっちゅうどこからか電話が入って来るし・・・。」


思っていたよりも、だいぶ重い話を聞かされ、彩は正直、対応に困りながら、耳を傾ける。


「なんか、今日のドタキャンの理由も、単純な仕事の都合じゃないような気がして・・・。」


「まさか、浮気とか・・・ですか?」


思わずそう聞いてしまった彩に


「彼が浮気するような男だとは思ってないから、そういうことじゃないとは思うんだけど・・・長い間、一緒にいる私だからわかるんだ。今の斗真は何かおかしい。」


厳しい口調で答える由理佳。


「斗真先輩のことですから、大丈夫だとは思いますけど・・・心配だったら、1度しっかりと話し合ったらどうですか?」


結局、そんなことしか言えない彩の顔を、由理佳は少し見ていたが


「そうだよね、彩の言う通りなのはわかってるんだけど・・・今の彼がそれを受け入れてくれるか、自信がないんだ。」


「由理佳さん・・・。」


「斗真は変わった、本当に変わっちゃった。もう私が好きだった、彩が知ってる斗真じゃなんだよ。」


「えっ?」


ついにそんな言葉を口にした由理佳に、衝撃を受ける彩。


「急にこんな話されても、彩だって困っちゃうよね。でも昔から斗真を知ってる彩しか、聞いてもらえる人がいなくてさ。ごめんね。」


そう言って、由理佳は取り繕うように、冷めたコーヒ-を口に運んだが、言うべき言葉が見つからない彩は、ただ固まってしまっていた。