遥たちの結婚式と同日に行われた新人戦は、団体、個人とも予選通過はならなかったが


(デビュ-戦としては上出来。みんなこれからだ。)


と尚輝も納得の内容だった。


そして翌週は県大会。団体戦は、男子は揮わなかったが、女子は見事に予選を突破。特に葉山千夏の活躍はめざましく、個人戦でベスト10に入る結果で、ひと月後の全国選抜大会予選に向けて、一躍注目を浴びる存在となった。


「凄いじゃないですか、葉山さんは。」


大会の翌日、出勤して来た尚輝に、校長が直々に声を掛けて来る。


「ありがとうございます。ただ本人に、無用なプレッシャ-を与えることは、避けたいと思ってますので、どうか暖かく見守っていただければと思います。」


「それは当然のことです。二階先生のご指導よろしきを得て、葉山さんがますます成長していく姿を楽しみにしていますから、先生、よろしくお願いしますよ。」


校長は笑いながら、そう言って尚輝の肩をポンと1つ叩き、自室に入って行く。その後ろ姿を見ながら


「そういう言葉が既にプレッシャ-なんだよ。」


と小声で呟いた尚輝の言葉が耳に入り、京香は思わず吹き出していた。


1時間目の前のSHR。担任を受け持つ2年C組の教室に入ると


「千夏、昨日は凄かったんだって?」


「たまたま、まぐれだよ。」


千夏を中心に輪が出来ている。明るい性格の千夏は、クラス委員を務め、クラスの中心の1人で、彼女の周りには、常に人が集まっていたが、今朝は一段とその輪が大きいようだ。


「今度の試合はひと月後なんでしょ?絶対に応援に行くから。」


「頑張ってね。」


「ありがとう。でも会場結構遠いから、無理しなくていいよ。」


「ううん、せっかくの千夏の大舞台だもん。是非行かせてもらうよ。」


クラスメイトたちの言葉に、ニコニコと笑顔を浮かべて応じる千夏。


「ほらほら、席について。SHR始めるぞ。」


その輪がなかなか解けないのを見て、尚輝が声を掛ける。


「あっ、先生すみません。」


その声を聞いた千夏は慌ててそう言うと、他の面々が席に着くのを見計らって


「起立。」


と号令を掛けた。