「こらぁ、なんでこんなところで2人して辛気臭い顔して話してるの?」


突然そんな声がしたかと思うと、誰かに抱き着かれて、驚いて彩が振り向くと


「由理佳さん・・・。」


だいぶ出来上がった様子の由理佳だった。


「久しぶりに可愛い後輩に会って、話が弾んでるのはわかるけど、いつまで愛しの彼女をほったらかしにしとく気だぁ?」


彩に密着したまま、斗真を軽く睨む由理佳。


「すまん、すまん。でも話が弾んでるように見えたか?廣瀬の恋愛懺悔に付き合ってたんだけど。」


「ちょっと、先輩。」


あなたが聞いて来たからじゃないですかと言いたげな口調の彩に


「そっか。でも彩、あんた、これからどうするの?」


と聞いて来た酔っ払った由理佳の声は大きい。思わず、彼女から耳を離す彩。


「あんたは昔から恋愛に臆病だよね。高校生の時ならまだしも、彩もそろそろアラサーと言われようかという齢だよ。積極的に行かないと。」


斗真の言葉をどう取ったのかは、わからないが、身体を離すと、由理佳は説教じみた口調で言い出す。


「さっきまで、結構いろんな男子と話してたみたいだけど、どうなの?1人くらい気になる人いなかったの?」


「は、はい・・・。」


「ちょっと聞いてたけど、連絡先交換しようって言われても、全然色よい返事してなかったじゃない。」


「それは・・・いきなりそんなこと言われても、合コンじゃないんですし・・・。」


「合コンだよ。」


「えっ?」


「結婚式の2次会が出会いの場なんて、常識じゃない。」


「・・・。」


「遥だって、とにかく彩になんとかいい出会いがないかって思って、だからわざわざ2次会の会場をここにして、2時間の予定を1時間延長して、彩が参加出来るように配慮したんじゃない。それをあんたと来たら・・・。」


酒の勢いもあって、止まらなくなる由理佳。


「もうその辺にしとけ。廣瀬だって、そんなことはわかってるよ。だけど、誰でもいいってわけじゃねぇんだから。」


見かねたように、斗真が口を挟むが


「斗真は本当に、昔から彩に甘いよね。」


由理佳は斗真にも噛み付く。


「わかった、わかった。じゃ、廣瀬。このままなら、次は瀬戸の結婚式か?まぁ、よかったら、その前にまた飲もう。さ、由理佳行くぞ。」


苦笑いを浮かべながら、斗真は彩にそう言うと、やや悪酔い気味の恋人を引き摺るように、離れて行った。