高砂席に上った新郎新婦が、一礼して席に着き、いよいよ披露宴が始まった。


ここまで来ると実際の進行や運営は司会者やそれぞれのスタッフに委ねられ、2人の近くで待機するプランナ-の彩は、ドレスの裾を直したり、立ち上がる際に椅子を引いたりといった新郎新婦のサポ-トに回りながら、一歩引いた立場で、披露宴の進行を見守る。


なにかトラブル、アクシデントがあれば、すぐに対処し、スタッフに指示を出す司令塔の役割を果たさなければならないからだ。


特に気を付ける必要があるのが、タイムスケジュ-ルの遅れで、興に乗ってスピ-チや余興が予定より長引いてしまうことは、往々にありがちなことで、このあとの式に影響が出たりすることは、絶対に避けなければならない。


そうこうしているうちに、新郎新婦はお色直しの為に退席。彩も控室に同行し、サポ-トに入る。


「新郎ってこんなに飲まされるものか?」


遥の衣装替えの間に、彩が用意してくれたドリンクを口にしながら、町田が愚痴る。


「それは、ある程度仕方ないけど・・・。でも、うちらの同期はおとなしいけど、大学や仕事関係の人たちのノリは凄いね。少しは断らないと、肝心な時にダウンなんて、みっともないこと出来ないよ。」


実は、傍で見ていて、さすがに彩も心配になっていた。


「廣瀬がそう言うんじゃ、本当に注意しないと。」


町田は思わず苦笑い。そうこうするうちに、遥が戻り、彩はやはりドリンクを用意する。


「彩、ありがとう。」


「疲れた?」


「大丈夫、疲れなんか感じてる余裕ない。」


「そっか。」


こうして、少しだけまったりした時間を過ごした新郎新婦は、再び会場へ。キャンドルサ-ビスから余興、そして宴はクライマックスへ。


新婦の両親への手紙に参列者は感動し、両家を代表しての新郎父の挨拶、そして最後の新郎の挨拶。マイクを握った町田は、本日列席したゲストへの御礼と、これから遥と共に幸せな家庭を築いて行く決意を披露した後


「最後になりますが、今日、このように盛大な式、披露宴を執り行うことが出来たのは、ずっと僕たち2人を後ろからサポ-トしてくれた、プランナ-の廣瀬彩さんのお陰です。」


(えっ?)


いきなり自分の名前が出て、心から驚く彩。


「廣瀬さん・・・ゴメン。やっぱり、いつも通り廣瀬って呼ぶな。廣瀬は僕たち2人にとって、高校時代からの親友です。そして今回、献身的にこの日の為に、頑張ってくれました。今日の佳き日を迎えられたのは、間違いなく廣瀬のお陰です。」


「彩にプランナ-をお願いして、本当によかった。感謝してるよ、彩、ありがとう。」


それは完全なサプライズ、言葉を失い、立ち尽くす彩に、拍手が沸き起こる。その拍手に、ハッと我に返った彩は、深々と頭を下げていた。