いつものように学校までは自動車で出勤。


「おはようございます!」


元気な声で出迎えてくれたのは葉山千夏。


「おはよう、葉山。早いじゃないか。」


「はい。1年生のみんなを見送ってあげたくて。」


今日は千夏以下の上級生、主力は翌週の県大会の練習の為、試合には同行せず、学校に残ることになっている。


「そうか、ありがとう。」


そんなこんなと会話を交わしているうちに、ほどなく他の部員たちも集合した。


「よし。じゃ、出発するぞ。」


尚輝の声掛けに続いて


「みんな、頑張ってね。これまでの練習の成果が出せれば、大丈夫だから。」


「はい、では行って来ます。」


主将からの激励に、1年生は元気よく答える。


「じゃ葉山、後は頼むぞ。」


「わかりました、行ってらっしゃい。」


千夏の笑顔に見送られて、一行は学校を後にした。


会場までは電車。ワイワイと喋りながらも、緊張を隠せない生徒たちに


「今日はいい天気じゃないか。新チームの初公式戦を祝うかのように。」


そんな声を掛けていた尚輝は、ふと


(そう言えば、今日は遥先輩と町田さんの結婚式だったな。佳き日になってよかった。それに、遥先輩のウェディングドレス姿、きれいだろうな・・・。)


そんな思いが浮かぶ。遥も町田も、尚輝にとっては、いろいろ面倒を見てもらった近しい1年先輩。せっかく招待してもらった式に参列できないのは残念だが、せめてものこととして、自分個人と颯天高弓道部一同の名前で、祝電を打たせてもらった。


その旨を、2人の結婚式のウェディングプランナ-である彩に連絡すると


『OK。じゃ、あんたのはともかく、弓道部名義の祝電は披露するように手配するから。』


と笑いながら、相変わらずの返事だった。


(遥先輩のサポ-トを彩先輩がするんだよな。遥先輩のウェディングドレスもいいけど、彩先輩のプランナ-の制服姿も凛々しくてカッコいいんだろうなぁ。見てみたかった・・・。)


そんなことを考えていた尚輝は


(バカ、大事な生徒の試合の前に、何を考えてるんだ、俺は・・・。)


慌てて、かぶりを振って、妄想を振り払った。