その後もう1件、打ち合わせをこなし、この日のスケジュ-ルは終了。オフィスに戻った彩は、一足先に戻って来ていた優里に声を掛けた。


調べたところ、麻美の従姉の挙式を担当したプランナ-は優里だった。そのことを覚えているかと尋ねると


「覚えてる、忘れられないよ、たぶん一生。だって、私がプランナ-として独り立ちしてから、初めて担当した挙式なんだから。」


感慨深げにそう答えた優里に、彩は目を丸くする。


「もう6年前になるかな、きれいな花嫁さんだったなぁ。私もこんな花嫁さんになって、こんな結婚式したいなんて、今にして思えば、プランナ-としてより、ただ自分の憧れや理想を追っただけの挙式になっちゃった気がするけど、それでもとっても喜んでいただいて。なんとかプランナ-としてやっていけそう、そう思わせてくれた結婚式だった。」


「そうだったんですか・・・。」


それは確かに忘れられない思い出だろうな、と彩も思う。


「式に参列した時、今回の新婦さんはまだ高校生だったってことか。」


「そうなりますね。」


「その彼女が、その時の式に感動してくれて、憧れを抱いて、今回ウチに見学に来てくれたんだとしたら、それはプランナ-冥利につきるよね。」


そう言った優里は、本当に嬉しそうだ。


「そのご夫婦とは、今でも年賀状のやり取りをさせてもらってる。もう随分の数、結婚式を担当して来たけど、うまく行った式もあれば、正直悔いの残る式もある。でもそんな中で、その後もお付き合いが続くご夫婦もいる。プランナ-ってすごい仕事だよね、考えてみると。」


「そうですね。」


相槌を打ちながら


(そうか、そうだよね。プランナ-とお客様って、結婚式までのお付き合いじゃないかもしれないんだよ。だとしたら、私は麻美さんの結婚式のプランナ-には、やっぱりふさわしくない・・・。)


そんなことを考えてしまい


「鯉沼様の結婚式、優里さんの担当になればよかったですね。」


思わず言ってしまうと


「ううん、そんなことないよ。何ごともご縁。結婚もそうなら、プランナ-とお客様の出会いもそう。鯉沼様からのメールを開いたのは、彩なんだから、やっぱりそれはご縁なんだよ。」


彩の内心の思いを知る由もない優里は、そう言って笑う。だが、その笑顔を見た彩の気持ちは複雑だった。