遥と町田が帰った後も、彩は2組のカップルを接客。この日も慌ただしく過ぎていった。


「どう、今日の手ごたえは?」


パソコンに向かい、今日の状況をまとめていると、優里が声を掛けて来る。この日の優里は、担当する挙式の打ち合わせがあり、接客は担当していなかった。


「どうですかね、五分五分というところですかね?」


上からは、多少値段を下げても、成約を獲れと発破を掛けられるが、お客の方もシビアにいろんな所と天秤にかける。即断即決してくれるカップルなど、ほぼ皆無だし、現実に成約率も4割あれば上出来とされている。


「お友だちはどうなったの?」


「本人たちは、かなり乗り気になってくれましたけど、この前もお話しした通り、新郎の両親の意向もあるんで。」


「そっか。結婚って本人たちの問題のはずなんだけど、実際にはいろいろな、しがらみがあるからね。」


優里はため息をつく。実際に成約が獲れても、そのあと親の意向や本人たちの希望がかみ合わず、迷走や果てはキャンセルなんて話になって、プランナ-を悩ませることは現実にある話だ。


「そう言えば、友だちの新郎さん、結構イケメンらしいじゃない。」


「そうですか。」


「みんな噂してたよ。」


「まぁ好みもありますからね。彼とは高校時代からの仲間ですし、なんといっても親友の彼氏ですから、そんな目で見たことないですよ。」


興味津々といった優里をいなすように、彩は淡々と答える。


「彩の同級生ってことは25歳?」


「ええ、2人とも誕生日が近いから、もうすぐ26ですね。」


「26か・・・若いね。」


「そうですか?」


「今どき26で結婚は若いよ。私なんて30目前で、見込み0なんだから。」


「・・・。」


「こんな結婚と身近なところにいるのに、肝心の自分が縁遠いんだから、因果なもんだよね。」


そう言って、ため息をつく優里。休日は平日、それも不定休。周りを見渡しても、圧倒的に女性が多い職場環境。出会いも少なく、デートの時間もままならないというわけで、ウェデイングプランナ-に独身者が多いのは事実である。


「仕事柄、イケメンには何人も出会うけど、当たり前だけどみんな彼女持ち。対象にならないし、八方ふさがり。学生時代にパートナ-を見つけられなかったのが、返す返すも後悔だよね。まぁ、私も30になったら、先輩たちみたいに達観できるのかも。」


「・・・。」


「さ、今日はもう帰ろう。明日も朝から忙しいし。じゃ、お先に。」


後半は一方的にしゃべって、席を立って行った優里を、彩は唖然としながら見送っていた。