(まあ、どうでもいいけど)

僕は自転車を走らせながら、思った。



「花澤流華(はなざわるか)です。よろしくお願いします」

ホームルームが終わった後、担任に促されて教室に入り、挨拶をした女子生徒にみんな見惚れてしまっていた。

腰まである長い黒髪は艶やかで、シュッとした一重はどこか凛々しく、日焼けという言葉を知らなさそうな真っ白な肌は雪のようで、「綺麗なお人形」という言葉が相応わしい花澤さんに、みんな言葉を失っている。彼女には男女問わず羨望の眼差しが注がれているように感じた。

(なんか、僕とは真逆の世界の人って感じだな。まあ僕にとってはただのクラスメートに過ぎないけど)

花澤さんは僕の斜め三つ前の席に座った。花澤さんの隣の席になった男子が顔を真っ赤にし、何かを緊張したように話している。

「うわぁ〜、あんな美人な人が来るなんて思わなかったよ。高嶺の花ってああいうのを言うんだろうな!」