でも、そんなの空想上の存在に過ぎないよね。そう僕が言って会話を終わらせようとすると、「待って!」と花澤さんは僕を止める。

「私が「そうなんだよ」って言ったらどうするの?」

「やっぱりって思うかな。花澤さん、オーラとか違いすぎるから」

普通に見えて普通じゃない。だからこそ、僕は花澤さんを目で追ってしまっていたのかもしれない。僕の、僕たちの持たないものを持っているから……。

「……私、本当に不老不死なんだよ。綾瀬くんの言う通りなんだよ」

俯きがちに、花澤さんはかばんの中から小さな瓶を取り出した。その瓶の中には薄紫の液体が入っている。

「私、この薬を二つある人に貰ったんだ。そのうちの一つを興味本位で飲んだら、ずっと歳を取らないまま生きることになった。どんなに大好きな人ができても、いつか置いていかれてしまう……。不老不死って永遠に一人ぼっちなんだよ」

花澤さんの目から涙が零れ落ちる。彼女はこの目でいろんなものを見て、色んな人と出会って来たんだろう。でも何百年もの間、誰かに置いていかれ続けていた。ならーーー。

僕は花澤さんに近付き、その手にある薬を奪う。驚いた花澤さんは慌てて僕を止めようとしたけど、僕は一気に薬を飲み干した。薬は苦くなく、甘くもなく、何の味も感じない。