虚しい。生きていることそのものが、ただ虚しい。

僕は綾瀬優里(あやせゆうり)。高校生になったばかり。そんな僕の人生を一言で表すのなら、灰色だろう。情熱も、希望も、夢も、愛も、何もない人生だ。

家族がいないわけじゃない。友達がいないわけじゃない。でも、普通ならば「大切だ」「愛してる」と思える相手にも何の感情を抱けないんだ。

「優里、早くご飯食べちゃいなさい!」

朝ご飯をのんびり食べていると、洗濯物を忙しく干している母さんに注意される。大学生の兄の薫(かおる)と中学生の妹の美香(みか)はもう食べ終わり、それぞれ学校へ行ってしまった。父さんは、僕たちが起きる前に仕事に行っている。

父さんも母さんも医者だから、僕の家はクラスの中でも一番裕福と言っても過言ではない。やりたいことは基本何でもさせてくれるし、誕生日には少し高価なプレゼントをくれる。でも、僕は「幸せ」とは思えない。

「優里、あんた部活に入らないの?お兄ちゃんはアカペラサークルに入って、美香は美術部に入ったのよ」