史人が小さい声で言う。

 「香那。お前この間の小さな子供のいるファミリー向けの案、以前俺に話したことがあっただろ……お前から来た案を見たとき驚いたよ。コマーシャルもお前の案だったんだとすぐにわかった」

 「……覚えてたんですね」

 「キッチンの壁にフライパンを大中小とぶら下げている……小さいときから子供も使えるように小さいフライパンから並べて、子供と並んで料理するのが夢って言ってたよな」

 「それを聞いてあなたはなんて言ったか覚えてる?」

 「……」

 「香那、俺は……」

 「ごめんなさい、そんなつもりじゃない。言い方が悪くてごめんなさい」

 この話は彼との未来を考えるのが難しいと結論を出した理由のひとつ。