接待相手と別れ、駅へ向かって歩いていたのだが、歩いたせいで余計酔いが回ったのだろう。
 千鳥足だ。

 「篠田、タクシーで帰れ」

 「……英嗣さんは冷たいですね。やっとふたりになったのに、昔話もさせてくれないのね。私頑張ったんだから褒めて欲しいな」

 しなだれかかられたが、腕を引っ張ってタクシーへ押し込む。

 するととたんにぐったりと寝てしまう。

 「おい、おい篠田。住所言え!」

 「……」

 「お客さん、すいません。場所がわからないんじゃ行かれませんよ」

 しょうがないから乗り込んでとりあえず方向だけはわかるのでそれを言う。