恋花ロマンチカ

「楽な方がいいじゃん、人間だから」

手のひらを翻す彼。だけど、その心地いい声にはどうしても頷けなくて「……そうかな」疑問を呈する。

「そーだよ。無駄なことしたくないし、余計な事は省いて生きてく方が賢いじゃん?」

さも当然のように彼は言う。だけど、益々あたしの心には疑念が募る。

「……片桐先輩にとって、恋愛っていう感情は、生きていく上で余計な事なんですか?」

「うん」

すぐに同意する彼は、まるで何かを諦めているようで

神様に恵まれた容姿もそう、広そうな交友関係もそう、根本的に、あたしとは住む世界がかけ離れているような人なのに。

不安に似た想いが内側で膨らんでいく。もう聞かない方がいいよって、あたまのどこかで、誰かが言った。


「……なんで?人を好きになったこと、ないの?」

「ないよ」

「女の人と噂はたくさんあるのに?」

「女の子はね、好きだよ」


口元だけの笑顔を張り付けたまま、彼は告げる。


「好きな分、嫌い」


内側を知らないと、到底たどり着けない言葉を


「大嫌い」


あたしに、聞かせた。