恋花ロマンチカ

多分、あたしなんてこの人にとっては羽虫みたいな存在だ。手を叩けば簡単に潰れるし、軽く息を吹きかければ飛んでいく。なんてずるい人なのだろう。

あたしはこんなに必死なのに、涼しい顔しているのもずるい。

華奢なのに、片腕だけであたしを拘束するのもずるい。

「いい加減、離して!ルール違反です!」

「勝手に帰ろうとするからじゃん」

漸く解放されると、身体を強ばらせていたお陰か、四肢を動かすことが億劫だった。

「……あの、前も思ったんですけど、片桐先輩の周りって、あんな女の子が多いんですか?」

そんな情けないところまで見せたくないから尋ねれば「あんなって?」案外と乗ってくれた。


「こう……身体だけというか……人目を気にしないというか」

「噂で聞かなかったの?」


噂、とは。彼女は基本的に使い捨てってやつだろうか。

「でも、結局は噂ですし」

「残念、俺、噂通りなんだよなー」

本人も開き直ってるし。この人の恋愛観はどうなってるんだ。

「気になるの?」

「……敵情視察です」

「楽だから」

今日の片桐先輩は口が軽いみたいで、ぽとん、落ちてきた言葉。「……楽?」思わず眉を潜めた。