恋花ロマンチカ

「それ、完璧僻みじゃん」

彼の膝の上で縮こまっていると、なんとも腑に落ちない言葉を聞かされて。「え」拍子抜けしたあたしは思わず目を開いた。

見あげれば、その人は相も変わらず調子よさそうにあたしの前髪を撫でていて

「綺麗な色してんの、嫉妬してるだけだよ、それ」

平気な顔して、心臓に悪い言葉を聞かせるのだ。

「……っそ、んなわけ」

空気を吸い込むと、喉の奥が短い音を鳴らした。

「クォーターだっけ」

「な、なんで知ってるんですか」

「男ならさ、可愛い子はだいたいリサーチしてるっしょ」

「ぜ、絶対にうそ。セリナとかは、美人だけど、あたしは」

「香澄ちゃんね、あの子可愛いよね。一緒に居るとこ見かけるけど、仲良いの?」


また、だ。

聞きたいことすぐはぐらかす、呑み込んでしまう。

なのに、あたしは流されるまま頷くしかできない。

「……っ、も、いい加減……離して!」

黙って濁流に呑まれるのも癪だから、足をばたばたと動かして、抵抗してみせる。

「その顔、そそるね」

なのに、やっぱり平然としている。癪だ。

「……変ってことですか?」

「そうそう、男の前でそんな顔しちゃだめだよ」

「……っ片桐先輩も、男です……」

「ん。だから俺以外の前でしちゃだめ」


からかわれてる、遊ばれてる。

知ってる、分かってるのに勝手に頬が熱くなる。

分かってる。本当に癪なのは、あたしの心臓の方だ。