恋花ロマンチカ

見上げると、いつもみたいに簡単な笑顔を乗せる片桐先輩がいた。少しの安堵に、出したかったため息を吐き出す。

鼻から吸い込んだ空気は、片桐先輩の匂いしかしない。

……さっきの人、片桐先輩のこと好きなのかな。

ちくん、と、先程の目線が心の隅っこが小さな針で刺される。

「良いんですか?」

見過ごすことが出来ずに尋ねれば

「良いのって、彼氏いるよあいつ」

さらりとその事実を片桐先輩は告げるので「ふーん。そう……て、え!?」流そうとした言葉を堰き止めた。

「彼氏とうまくいってない時ばっか俺ん所来るんだよね」

いい加減ウザい、とか、片桐先輩は面倒そうに言うけれど、今の高校生って凄いなぁと、軽いギャップに打ちひしがれたあたしは「そ、そうなんだ……」と安直な言葉を零すしか出来ない。

「彼氏いるうちはいいんじゃね」

あたしと違って平然とする片桐先輩は再び訳の分からないことを聞かせる。

「どういうこと?」首を傾げても、片桐先輩は何も言わなかった。

その代わり、首の横を掠めるみたいに彼の顔が近寄る。ぐっと近寄った距離に、どきり、馬鹿みたいな心臓が再び騒ぐ。