恋花ロマンチカ

だからあたしも階段にハンドタオルを敷いて、膝の上にハンカチを乗せると、その上にお弁当箱を広げた。

中学の時だったら、絶対に有り得なかった行為。

当時のクラスメイトが見たら、どう思うんだろ。

はしたないとかみっともないとか、それらしい言葉を浴びせられるのだろうか。

でもね、かたっくるしく背筋を伸ばして、丁寧にカトラリー両手に持って、音も立てずに食べるよりさ、断然、こっちの方が美味しいんだって最近になって知った。


「片桐先輩、そのパンばっかり食べてますね」

「ん。俺、冒険せずに気に入った物はずっと好きなタイプ」

「あたしは新商品試しちゃうタイプです」

「だろうね。餌付けんの面倒くさそう」


くつくつと浮き出た喉仏が揺れる。しかし、餌付けって、なんの事だろう。


「なんの話ししてるんですか?」

「ひなの嗜好の話でしょ?」

「…………いま、違う話しましたよね?」

「本当は学食の方が良いけど、ひなは学食嫌いじゃん」


疑問ふたたび。この人と話していると、話があっちこっちに広がって、当初の疑問がふわふわとどこかへ逃げていく。

なのに片桐先輩はちっとも気にしない。勝手に必死になっているのは、いつもあたし。