「ちゃんと来たじゃん」
ちゃんとって、あたしが来るのわかってて言ってるに違いないのに。
「これ、本当に片桐先輩なんですか?」
「他に誰がいるの」
くす、と、造形のとれた薄い唇の端っこを計算したように持ち上げるその人。
同じクラスの男子の文字は暗号みたいで、解読に時間が掛かるっていうのに、そんな所まで完璧なんて聞いてない。
ぷ、軽く頬を膨らすと「可愛い可愛い」とか。微塵も思っていないような軽い口ぶりの彼は、人差し指で膨らんだ頬を啄く。
呆気なく触れられて、慌てて距離を取った。
「とにかく、今後一切、変な手紙入れないでくださいね」
警戒心丸出しで、顎を引く。
すると、彼はこてんと首を傾げ「変ってどんな?」さも自然に、難易度の高い問題を投げつける。
「どんな……」
言われて、うんと短く悩んで、すぐに気付いた。
「って、問題はそこじゃないです!手紙を」
「そんな決まり、言わなかったよね」
「つ、付け足しです」
「へぇ、負けんのが怖い?」
「……負け、ません!好きな人作ります!」
「がんばれ」
再び聞かされた、軽い言葉。彼にとってその議題は終わったみたいで、その綺麗な指先は茶色の紙袋からいつものお気に入りのパンを取り出した。



