恋花ロマンチカ

気まぐれで選ばれたってだけなのに、こうもおもちゃ代わりにされるなんて、そんな噂出回ってなかった。聞いてなかった。

むかむかとした苛立ちは、深呼吸でなんとか落ち着かせて、強いまなざしで片桐先輩を見上げる。

「それで、どんなのですか?」

どうせ、変なのでしょ、からかって遊ぶだけでしょ。

たかを括って、できるだけぶっきらぼうに告げると、「んー」泳いでいた片桐先輩の視線が、ぱちり、丁寧な瞬きと同時にあたしに降り注ぐ。


「好きなやつ、作れば?」


…………はい?


なぜか、何度だって。

片桐先輩はやたらとあたしの鼓膜に残る言葉を聞かせるから、固く結んだ表情はすぐに紐解かれてしまう。

ぱち、ぱち、ゆっくりと瞳を瞬かせ「……好きな、人?」子どもみたいに問い返せば、あたしと違ってなにか確信めいた彼は、うん、満足気に頷いた。


「それがいい。ただし……そうだな、1ヶ月」


シルバーのリングが鎮座する指が、ぴん、と空に向かって立つ。


「1ヶ月の間に、俺以外の男見れたなら、良いよ」


そこにあるのは、勝ち誇るような、王さまの笑顔。

「…………見つけてやりますよ」

だからあたしはそれに立ち向かうように、ツンと唇をとんがらせてみせる。