恋花ロマンチカ


狭いのに、吹き抜けの天井が高くって、時折すきま風がびゅう、と、吹きすさぶ非常階段。

目の前に居るのは、笑顔が消え去った王子さま。

ひらっとした口元だけの笑顔はよく見るのに、無表情だと殊更顔立ちの良さが際立つから、見慣れない表情に、とく、とく、張り付いた鼓動がスピードをあげる。

「ひなって、笑うことあんの?」

形のいい唇が、微かに動く。しかもなんだ、相変わらず人をバカにしたような口ぶりだ。


「そ、そりゃあ、人間だから笑いますよ」

「いっつも怒ってばっかじゃん?」

「それは片桐先輩が失礼だからです!」

「ふーん?ちょ、笑ってみ」


ぱ、と、思いついたように彼は手を開くから、自由になった頬を解すようにむにむにと自分で摘んだり、ぷく、と空気を入れたりして顔のコンディションを整える。

そうして、ニコ、と、思いきり歯を見せれば

「…………そうじゃねーよ」

呆れたように、いや、馬鹿にしたように、彼は口だけで小賢しく笑うのだ。