「櫻女に一時期…………いや、やっぱやめとこ」
突然興味が逸れたのか、気になるところまで言いかけて、呆気なくそれをやめるのだから。「き、気になります!」乞うように、身を乗り出した。
すると片桐先輩の綺麗な顔がさらに麗しく……いや、まるで計算されたように、企んだ微笑みを顔に乗せた。
……嫌な予感だ。
「ひながかわいーく、"お願い"って笑ったら教えたげる」
頷くはずがない。三度、あたしはぷい。とそっぽを向くと、片桐先輩の両手があたしの頬を、むに、と、掴むから、やや強引に対面する。
その女性みたいに綺麗な指先は少し冷たくて、思った通り荒れもせずに滑らかで……。
じゃなくて、何だこの状況。
長いまつ毛の乗る二重の瞳が、じぃ、とあたしを見下ろす。熱が篭もる頬、シルバーのリングがひやりと当たって、やたらと心地いい。
頬に指先が沈めば、急に引っ張られるから、ぐい、と持ち上がる。
「な、なにひて」
物理的に動かしにくくなってしまった口を、なんとか動かしてみせる。



