「じゃあ、どこ?」
ずい、と、その満点偏差値の顔が近寄るから、いつの間にか前のめりになっていた上体を、くい、と後ろに引いて体勢を立て直す。
「さ、さっき言いましたよね、必要以上に」
近寄らないで、言いかけるそのまえに「だから」彼の口が動く。
「ひなが俺の言うこと聞いたら俺もひなの言うこと聞くって」
そう返されると身も蓋もない。ぐぬぬ、と、何も言えずに口の中に反論を押し殺した。
だから、ぷい、そっぽを向いたあたしはたっぷりと時間をかけて「…………櫻女《おうじょ》、です」と、少し前まで過ごしていた箱庭の名を告げた。
地元が離れているから、しらないかな。なんて呑気に思っていれば、パチン、と、彼の指が気持ちのいい音を立てて鳴いた。
シルバーのリングが乗った人差し指がこちらに向く。
「だろうね。やっぱ見たことあると思ったわ」
「だろうね!?見たことある!?」
そっぽを向いていた時間は僅か五秒。視線はまんまと片桐先輩の顔に釘付けだ。



