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「…………なにこれ」
お決まりの非常階段。今日も今日とてあたしの昼休みは片桐先輩によって捕縛されたけれど、今日のあたしはひと味違う。
彼に向かって、びし、と、得意げに人差し指を突き上げた。
「ルールです。ルールを決めましょう」
ふふん、気持ちよく喉を鳴らせば、相対したその人は、ふうん、とスマホの中身をなんともまあ、興味もなさそうに眺めている。
親指の動きが止まると、彼は薄い唇の端っこを軽く持ち上げ、透かしたように鼻から軽い息を吐き出す。
そうして「よく頑張ったね、えらいじゃん」と綺麗な笑みを浮かべた。
その瞬間、頭の隅で、カーン。とラウンド・ワンの鐘が鳴り響いた。
「……馬鹿にしてませんか?」
「してないよ。昨日の夜、遅くまで考えてた?」
「そうですね、考えました!」
「目の下のクマ、酷いよ」
ふわり、難なく片桐先輩の親指は、あたしの目の下をゆるりと撫でる。
まさか、今し方言ったって言うのに、こんなに軽々しく破られるとは思わなかったあたしは目をぱちぱちと瞬きして、凝り固まった脳みそを溶かす。



