「大丈夫。落ち着いて、ゆっくり息吐け」

 息、吐く――? 吐くときってどうすればいいんだっけ。

 パニックになっているせいで、息の吐き方もよくわからない。

 一生懸命に頭で考えながら、必死に誰かの胸元をぎゅっと握る。

「ほら、真凛。息、ゆっくり……」

 だけど、誰かに名前を呼ばれて背中を撫でられているうちに、少しずつうまく息が吐けるようになってきた。

 しばらくしてうまく息ができるようになると、ほっとして気が抜ける。

 頭がぼんやりとして、気を失いそう――。

 一気に体の力が抜けたわたしを、誰かが腕で支えてくれる。

 うっすらと瞼を開けただけのぼやけた視界に映るのは、茶色か金色のような明るい髪の男の子。

「だ、れ……?」

 掠れた声で訊ねると、支えてくれている男の子の手がわたしの頭を優しく撫でた。

「大丈夫。なにも心配しないで……」

 男の子がぼやけた視界のなかでやさしく微笑む。