「で、どうなの?2人は付き合ってるの?」
「……付き合ってないよ」
「それ、本当?どう見ても、これ、付き合ってる2人にしか見えないんだけど」
「………」

何枚かある写真の全てに写っている上條君の表情が、学校では見せない優しい笑顔のものだからだ。

「上條君はみんなの上條君だから、彼女じゃないなら、あんまり近づかないで貰える?」
「っ……」
「上條君と仲良くしたい子だって多いのに、席が近いってだけで特権振りかざすのは止めて貰いたいんだけど」
「………」
「ねぇ、聞いてんの?」
「………ん」

上條君がモテてることは分かっていたのに。
いつからだろう?
親しいと勘違いしてたのは。

結城さんが指摘するように、別に彼女でもないのにデートだなんて勝手に思い込んで。
単なる御礼がしたかっただけだ。
別にそれ以外の感情を抱いてたわけじゃない。
そう自分自身に言い聞かせた。

「小森さーん、会議行けそう?」
「あっ、うん」

1組のクラス委員の中島(なかじま) 千尋(ちひろ)が、前のドアから声を掛けて来た。

「結城さん、ごめんね。これから会議があるから」
「言いたいことはそれだけだから、ちゃんと覚えておいて」
「………うん」

微妙な空気が漂う。
別にまどかが悪いことをしたわけじゃないのに、責められてる雰囲気になっていて。
そんな気まずい雰囲気を悟った中島が、『早く行こう』と催促して来た。

「さっきはありがとう」
「それは全然構わないんだけど、もしかして上條君とのこと?」
「へ?」

中島の元に駆けよったまどかに、中島は心配そうに見据えた。