「どけ、俺の前に立つな」
クラスメイトでもないのに、気安く話しかけんな。
っつーか、お前らが近づきすぎて、まどかが嫌そうな顔してるだろーがッ!
「近寄んなっ、俺に気安く話しかけんな」
誰だか知らねぇが、そこどけっての!
邪魔で仕方ねぇ。
「いつから付き合ってんの?」
「告白したのはどっち?上條くんから?」
騒ぐ女連中の声を聞いて、更に質問して来る輩が増えて来た。
朝からだりーな。
こいつら、他に話すことねーのかよ。
「廉」
「……あ?」
「いっそのこと、まどかちゃんと手繋いで登校したら?」
「……?」
それって、どういうい意味合いで?
たまに朝陽は予想もしない事を突然言い出す。
「いちいち説明したりするより、堂々とアクション起こした方が手っ取り早いと思うよ?」
「……あぁ、なるほど」
「まどかちゃん狙いを牽制する意味合いでも通用するし、一石二鳥じゃない?」
「確かに」
朝陽の言葉に納得。
笹岡と吉田がいい見本というやつか。
朝陽が俺の耳元で助言してくれて、スッキリした。
よし、大事な彼女を狙う輩は早々にご辞退願おうか。
「まどかっ」
数メートル先にいるまどかに声をかける。
今まで『小森』と呼んでいた俺が、堂々と『まどか』と呼ぶこと自体に驚いたようで。
近くにいる生徒たちが一斉にまどかの方に振り返った。
そんな奴らを掻き分けて。
一心に視線を浴びる人物の元に。
「長瀬、まどか借りるな」
「……仕方ない。暫く我慢してあげる」
「サンキュ」
「ッ?!」
外野の視線が注がれる中、動揺してるまどかの左手をぎゅっと掴んだ。