歓迎会当日の朝。
親友の和香と一緒に登校しているまどかは、推し活の話を延々と聞かされている。
「でね?来週の土曜日に、ラジオの生収録があるらしくて、今夜その生収録の観覧抽選があるの!」
「へぇ~、楽しみだね」
「だから、まどかも応募して?」
「は?」
「1人より2人の方が確率が倍じゃない」
「……それは分かるけど」
「ねぇっ!当たったら、まどかの好きなルワンドのワッフル好きなだけ奢ってあげるからっ!」
「………しょうがないなぁ」
「やったぁ♪まどか、だ~いすきっ!」
「ハイハイ、分かったから」
小っちゃくてふわっふわで可愛い和香に頼まれたら、断れないよ。
こんな嬉しそうな顔されたら、何でもお願いごと聞いてあげたくなる。
小悪魔的な和香に弱いまどかは、抽選応募開始時間をスマホのアラームにセットする。
「そういえば、ピアノどう?苦手箇所あるって言ってたけど」
「う~ん、何とか弾けるようにはなったけど、全校生徒の前だとどうだろ」
「大丈夫だってっ!まどかって、意外と肝据わってるから、いざって時は頼りになるし」
「……だといいけど」
「そんな顔して……、まどからしくないよ?」
「っ……」
バンッと背中を叩かれた。
分かってる。
こうやって励ましてくれてるってのも。
弱音が吐きづらい性格なのも知ってる和香だからこそ、こんな風な気合の入れ方してくれるってことも。
「うん、間違えたって、別に死ぬわけじゃないしねっ!ガンガン攻めたろうじゃないのっ!」
「そうそう、その意気だよ」



