「……あ、あの、ご両親は……」

「あ、俺一人暮らしだから安心して」


もしここでご両親がいたとしたらもっと緊張していたところだった。
聞いてよかった……と少し安心する。


「…あ、でも安心されても困るかな」

「え?」

「だって、男と二人きりなんだよ?」

「……っ!」


私の顔を覗き込んで妖しく笑ったチカ先輩に、心臓がドクンと跳ねる。
ポタポタと水が流れているから、余計色っぽく見えて。
な、なんでそんな緊張させるようなこと言うの……っ!
ちょうどエレベーターが止まり、焦る私をおいてチカ先輩は降りてしまって。
その後をついていく。


「俺の家、母さんが結構偉い人でさ。父さんはもういないんだけどね」

「そうなんですか……」

「実家はここから二駅先にあるよ。姉さんと母さんの二人で暮らしてるけど、女二人じゃ心配だからなにかあったらすぐ行ける距離で一人暮らししてるんだよね」