「テスト疲れたし帰ろうか」

「そうですね」


ふぅ、と息を吐いて立ち上がったチカ先輩に私も続いて立ち上がる。

なんだかドッと疲れが出てきた気がする。
変な緊張から解放された気分だ。


「……雪桜ちゃん」

「はい……っ?!」


鞄を持つと、背後にいたチカ先輩から声がかかって振り返った。
その瞬間、またさっきみたいに今度は軽くフワッと抱きしめられて。


「…一瞬だけ、ね?」

「……っ」


すぐに離したチカ先輩は私の顔を見て満足そうに笑った。
一瞬だけって……っ。
こんな一瞬なのに、ドキドキがまた止まらなくなる。

……不意打ち、だよバカ。
仕返しの意味がわかって、かああっと顔に熱が溜まる。


そんな私の反応を楽しんだかと思うと、私の手を握ってきて。


「よし、帰ろうね」


まるで離さないとでも言うように、私の手を引いて歩き出した。
まさかのことにされるがまま歩くしかなくて。
目の前の背中を見てギュッと胸が苦しくなる。


……ドキドキさせないでってば……バカっ。