侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます

「ブハッ!」
「キャッ!」

 いまよ。いま、やっと来るわ。

 そのタイミングで唇に触れた。

 だけど、それは彼のぷっくり艶々した唇の感触ではなかった。

 毛の感触。

 瞼を開けてしまったのはいうまでもない。

 すると、アールの狼面が侯爵とわたしの間にある。

「アール、邪魔をするな」
「アール、いやだわ」

 侯爵と二人で笑ってしまった。

 二人とも、アールの顔に口づけをしてしまった。

 が、当の邪魔者アールはツンとすましている。

 そして、わたしたちを見てニンマリ笑った。

 そうね。わたしたちの時間はこれから。焦る必要なんてない。

 ずっとずっといっしょにいられるのだから。

 侯爵とアールと三人でいっしょにいられるのだから。

 気長にいけばいいわよね?

                          (了)