気がついたら、全身でよろこびをあらわしていた。具体的には、モフモフ尻尾を盛大に縦に横に振っていた。

 すごいわ、わたし。尻尾を振っている。

 感心したけれど、いまは犬なのだから当たり前よね。

 一瞬だけ冷静になってしまった。

「アール、慰めてくれるのか?」

 わたしの全力の「うれしいアピール」が彼に伝わったみたい。まあ、ちょっと解釈は違うみたいだけど。

 その侯爵の泣き笑いの表情を目の当たりにした瞬間、つぎはまた先程とは違うなにかが溢れてきた。

「おいおい、そんなに慰めてくれなくても」

 気がついたら、彼に飛びついていた。その反動で彼が尻もちをついたけれど、それでもかまわず彼のごつい肩に両前脚をのせ、彼の顔をペロペロなめていた。