「アール、行きましょう」

 アールにというよりかは自分を促す為にアールに声をかけ、二人して建物の中に入った。

 階段はかなり古く、一段のぼるごとに怖ろし気な音を発する。

 そして、二階へと達した。

 薄暗く湿った廊下には、鼻をつまみたくなるほどの異臭が漂っている。

 意を決してその廊下を奥へと進んだ。

 廊下の左右に扉が並んでいて、その扉の間隔から一部屋の大きさがそれほど広くはないことがわかる。

 床にはゴミやそうでない得体の知れないものが積もっていて、壁や扉には落書きや得体の知れない汚れが付着している。

 さすがに気がひける。

 そのわたしの心情の変化に気がついたのか、アールがカーディガンの裾を噛んでひきとめてきた。

「わかっているわ」

 体ごと反転させ、彼に言った。